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テクニカルディレクターインタビュー / Technical Director INTERVIEW




グランフォルティス沖縄が掲げる指導方針や育成哲学とは何か。
現場を統括する奥間翔テクニカルディレクターに話を聞いた。







かけがえのない存在になるために


−−−−グランフォルティス沖縄はどのようなクラブでしょうか。


「私たちは“沖縄県民にとってかけがえのない存在になる”というクラブビジョンを掲げています。グランフォルティス沖縄の子どもたちが県民に勇気や感動を与え、見ていて心が揺さぶられるようなサッカーを目指しています。一方で、たとえ日本一のチームになったとしても人間性が伴わない集団であれば、県民にとってかけがえのない存在にはなれないですよね。私たちは全ての根幹を人間教育に置き、サッカーを通じて自立・自律できる選手を育てることが大きな夢でもあります」


−−−−クラブとしての活動内容は?


「大きく分けてふたつあります。3歳から小学6年生までを対象とした沖縄県内7か所で行われているサッカースクールの活動と、競技志向の選手で構成されたジュニア(小学生)、ジュニアユース(中学生)のサッカーチームとしての活動です」


−−−−サッカースクールでは何を伝えているのでしょうか?


「グランフォルティス沖縄のサッカースクールは、サッカーの楽しさを理解してもらい、友だちと一緒になって身体を動かすことの喜びを感じてほしいと思っています。私たちには“大声で笑うこともサッカーだと考える”というテーマがあります。初心者の方は大歓迎ですし、サッカーを追求するというよりも、まずは全身を使ってサッカーの魅力を感じてほしい。サッカーってこんなに面白いんだ! という体験を通してスポーツへの扉を開いてもらえれば最高です!」


−−−−もうひとつの軸であるサッカーチームは?


「沖縄の育成年代の流れを変えるために設立しました。私は県外や海外のトップレベルの選手と比較しても、沖縄の子どもたちのポテンシャルは非常に高いと感じています。特にジュニア年代の身体能力に関しては独自のものがあり、スピードや敏捷性などは目を見張るものがあります。技術レベルも情熱ある指導者の方々の影響で、以前に比べ高くなっています。しかし、サッカーに必要な状況判断の質がまだまだ足りない。テクニックとは技術だけではなく判断もセットなのです。沖縄の子どもたちがフットボールインテリジェンスと呼ばれる、“サッカーに必要な戦術理解力や状況判断能力”を身につけることができたら、日本を代表する選手が誕生する可能性は高くなる。我々が目指すところはそういうステージになります」









沖縄らしいサッカーの追求


−−−−沖縄の子どもたちは全国的に評価の高い選手は多いですが、高校生になるとトーンダウンしてしまう印象です。


「ジュニア年代からジュニアユース年代にかけて身体能力で結果を残せるので、どうしてもその能力に頼ってしまうことが多いのでしょう。身体が完成を迎える18歳頃になると、他の選手も身体の成長はあるのでフィジカルが追いついてきます。結果として、身体能力に依存しすぎていた選手はサッカーに必要な技術や判断能力という要素があまり伸びていないことが多いですね。全国的に評価の高いフィジカル能力があるにも関わらず、非常にもったいないと感じています」


−−−−この部分をどう打開していくのでしょうか?


「グランフォルティス沖縄では技術や判断能力、つまりテクニックのことをその選手の一生の“財産”と定義しています。その“財産”は一生、世界中どこにいっても変わりません。神経系の発達が素晴らしい年代(9歳から12歳)にかけて、子どもたちにどれだけの財産を与えることができるか、でしょうね。

確かに沖縄の子どもたちの強みは一瞬のスピードや敏捷性です。ですが、あまりにもフィジカルベースでサッカーをすると、必ず壁にぶつかります。世界基準で話をすると、スピードはアフリカの選手には勝てないし、高さはヨーロッパの屈強なDFにはかなわない。なので、目指すべきは沖縄の選手の特徴を活かしつつ、テクニックを駆使し、次々と数的優位の状況を作って崩していくサッカーをデザインすること。それが沖縄の生きる道なのかなと思います」


−−−−世界のサッカーの傾向がフィジカルとテクニックを全面に活かした方向に進んでいます。


「11人のアスリートが揃うイメージですよね。なので、沖縄の選手の特徴が時代にマッチしてきているとも感じます。サッカーはその地域の土壌や風土、精神的な気質、文化がプレーに現れる面白い競技です。北海道には北海道の、東京には東京の特徴があるはずです。それは沖縄も同じ。沖縄の地で育った選手が具現化できるサッカーもあるでしょう。極端に言えば、私たちの選手が北海道のチームのユニフォームを着ていても、あれ? グランフォルティス沖縄だよね? と言われるような特徴のあるサッカーの追求を目指しています」


−−−−具体的に、グランフォルティス沖縄のサッカーとは?


「ひと言で言うと、適切な状況判断をすべての土台とし、アグレッシブかつダイナミックなサッカーです。まだまだ完成にはほど遠いですが、夢は大きく、質の高いサッカーを完成させたいですね」









高校から県外への越境はちょっと早い?


−−−−グランフォルティス沖縄は一貫教育も推奨していますね。


「現在、沖縄のトップ20人の中学生の多くは、高校生になると県外への越境を選択します。沖縄には激しいポジション争いも、自前の人工芝のグラウンドもない。選手として上のレベルで切磋琢磨したいと思うのであれば当然の選択でしょう。しかし、“沖縄で育つ”ことの価値もあるのではないしょうか」


−−−−価値とは?


「高校年代は自身への関心は落ち着きつつ、他者への興味がより具体的に湧いてくる時期ですよね。人に対しての興味もそうですが、自分が置かれている立場や環境、文化などに視点を向け始める。沖縄で生まれ育ったからにはアイデンティティを得てほしいし、そのスタート地点が高校年代ではないかと思うのです。沖縄の環境の中で高校時代を過ごすことに意味がある。就職や大学進学、留学などで沖縄を離れて様々な経験を得たあとも、アイデンティティが形成されていれば将来的に沖縄に戻り、得た経験をもとに各界で活躍するというサイクルが生まれる。それがこの島の地力になるでしょう」


−−−−中学卒業時点で県外に行くのはちょっと早いのでは、と?


「もちろんすべてとはいいませんが、影響はあるでしょうね。高校時代から県外で生活することで、“将来沖縄のために”という選択は多少薄れるかもしれません。沖縄出身のJリーガーが誕生することは重要ですよ。子どもたちに夢を与えてくれますから。しかし、私はそれ以上に先ほど言った“将来的に沖縄に還元するサイクル”が強固になったほうが、沖縄県のためになると思う。ましてや、全員がプロサッカー選手になるわけではありませんから。サッカーを通じて何を学ぶのか、のほうが重要です」





私たちは子どもたちの未来を作っている


−−−−しかし、現状では人材の流出は避けられません。


「そうですね。優秀な選手たちが求める環境を与えられていないと言わざるを得ません。でも、環境がなければ自分たちで作るしかないんです。奇麗な人工芝のピッチはありませんが、指導者の質の向上や魅力的な育成システムを確立することができれば、彼らが振り向いてくれるかもしれない」


−−−−魅力的な育成システムとは?


「現在、私たちは民間のクラブでは沖縄県で初めてとなる高等学校との提携を目指しています。小学校から中学年代の間だけではなく、高校年代も同じサッカーを行い、同じ哲学の下で12年間を過ごす。すべてのスタッフも同じ方向を向いているので、18歳まで指導がブレることはありません。ずっと一緒なので人間性も把握でき、サッカー以外の生活面もきめ細かな教育が可能になるでしょう」


−−−−確かに、それは沖縄では初の試みとなりそうです。


「また、サッカーはもちろんのこと、サッカー以外の部分にも力を入れています。そのひとつが野外教育活動です。キャンプや海のプログラムを幼少期から行うことで、大自然の中で自身を見つめ直し、様々なアクティビティを通して主体的な判断ができる選手を育成したいという思いからスタートしました。学業に関しても、サッカー“が”できるのではなく、サッカー“も”できる選手を育てていきたい。毎学期通知表の提出は必須ですし、ぜひ勉強とサッカーを両立していただきたいと考えています。サッカーしか知らない人間は、サッカーさえも知らない人間になりますからね。こういった指導方針も一貫教育ならではだと思います」


−−−−今後、グランフォルティス沖縄の活動が楽しみですね。


「志の高いスタッフとともに、掲げた哲学は曲げずにサッカーというスポーツの価値を上げていきたい。サッカーを社会性の高いツールとして捉え、発信することが使命だと感じています。地域のために、沖縄のために、そして何より子どもたちの未来のために。これからも応援よろしくお願い致します」